自殺対策への提言


2015年

新しい年が明けました。
2015年が皆様にとりまして、よき年でありますように、ご祈念いたします。

昨年はホームページを書く余裕もないほどの忙しい一年を過ごしました。理由の一つは、秋田県の自殺率全国一を返上したいとの思いに駆られて、街頭でのチラシの配布、「いのちの総合相談会」の開催、啓発活動としての地域講演の増加等で、一年分の行事を1月〜12月までに9か月間に前倒ししました。その間に、3月には韓国に訪問、10月は韓国・忠清南道の行政視察団17人を迎えての国際交流を開催しました。また、岩手県釜石市、大槌町等の被災地支援や相談会、さらに、私の半生を描いた「あなたを自殺させない」(新潮社)ジャーナリスト中村智志さん著の出版も重なったのです。「民学官」連携の活動の成果で、秋田県の自殺者数は5年間連続して減少。20年目にして自殺率全国一を返上した可能性があります。忙しいという字は「心」が「亡ぶ」と分解される。今年は動きをとめて、思考を深める年にしましょう。
2015年1月155日、秋田県警から県内における14年の自殺数統計が発表されました。それによると、秋田県の自殺者数は「277」で、昨年から20人の減少。県警に記録が残る1979年以降最少でした。(35年前の水準に帰った)。県警調べでは03年(平成15年)の559人がピーク。昨年は277人でしたから半減(50.4%減)したことになります。6月に発表される厚労省の人口動態統計を待たなければなりませんが、おそらく自殺率全国一は返上したでしょう。

新聞記事と当方の情報に従って内容についてコメントします。

・男女比
 男性193人(69.6%)女性 84人(30.3%)
 ※7対3の男女比は前年とほぼ同じ

・年齢別
 20才未満 3人(1.8%)
 若者(20代、30代)52人(18.7%)
 壮年(40代、50代)85人(30.6%)
 高齢者(60代、70代、80代)137人(49.4%)
※若者の自殺者数が約2割ラインに増加して定着しつつある。若者の自殺対策が必要です。高齢者の自殺は45〜50%で常時存在する。

・原因別(複数該当)
 健康問題 121件(37.2%)
 経済・生活問題 50件(15.4%)
 家庭問題 27件(8.3%)
 勤務問題 26件(8.0%)
 男女問題 3件 (0.9%)
 学校問題 1件 (0.3%)
 その他・不祥 97件(29.8%)
※経済問題の自殺者数が年13年は37人、14年は50人と増加していす。経済問題以外の原因は横ばいといっていいでしょう。

・職業別
 
自営業者 30人(10.8%)
 被雇用者・勤め人 70人(25.2%)
 無職者・不祥 178人(64.2.%)
※当法人が取り組んでいる経営者の自殺者数は活動の開始時は89人でした。ここ数年は28人、30人で推移しています。もう10人程度は減らせるでしょう。当面は「20人」を目標とします。次回からは、いかにすれば、自殺者を減らして「県民のいのちを守れるか」現場型の自殺対策の実践方法を提案します。今年は真面目にホームページを更新しますので、よろしくお願いいたします。




いつしか若葉の季節。
昨年は「秋田県の自殺率全国一を返上したい」との思いに駆られて忙しく活動していました。2015年はゆっくりと過ごせると思っていましたが、さにあらず、ホームページを書く暇もないほどに忙しく1〜4月を過ごしてしまいました。自殺対策関連の書籍への執筆依頼や新聞社の原稿依頼に追われているのです。それでも、日常の相談業務や自殺対策の連携活動は手を抜くことができません。

4月23日に、弁護士、司法書士、臨床心理士、社会保険労務士等のそれぞれの分野の専門家と自殺予防にかかわる民間団体の「連携」による相談員会を立ち上げました。名称は「蜘蛛の糸・いのちの相談員会」といいます。

当法人が「いのちの総合相談会」を始めたのは2009年。これまで61回開催して528人の相談を受けています。自殺対策に必要な知的資源は「良質な相談」と「啓発活動」です。立派な相談機関を立ち上げても「死にたいほどに悩んでいる人」のもとに相談期間の存在を知らしめなければ「相談機関」の意味をなしません。「啓発」を「相談」それに、もうひとつのキーワードに「連携」があります。今回の「いのちの総合相談会」の定例化は、秋田県の自殺者数減少に大きく貢献してきた相談員の連携組織の具現化です。相談会を定例化して毎月5日間の連続開催。民間団体の相談員が垣根を低くして面談し、弁護士等の専門家につなげます。勤務者が相談を受けやすいように土曜日も開催。相談実績がある体験豊富な相談員組織がスタートします。専門家と民間団体が連携して自殺対策に取り組む相談機関は秋田県では始めてです。東北にもありません。全国的にも類例が少ないのではないでしょうか。地元魁新聞の掲載記事を紹介します。

相談員の構成メンバー
弁護士2名、 司法書士2名、 臨床心理士2名、社会保険労務士1名、社会福祉士1名、社会福祉主事1名、産業カウンセラー5名、心理相談員1名、精神保健、生活保護、就労支援、若者等の相談員と自殺予防「秋田・こころのネットワーク」3名、と当法人の事務局スタッフ。合計24名。




ついに自殺率全国一を返上する。
秋田県の自殺率全国一は平成7年から19年間続いていました。
自殺率(人口10万人当たり)が全国1の秋田県。この評価はいち県民として悲しい思いに駆られてきました。「何とかしなければならない」と思いながら返上を目指して懸命に活動してきました。6月5日、厚生労働省の人口動態統計が発表されました。
それによると、秋田県の自殺率は26.0。1位は岩手県26.6、3位宮崎県23.9、4位新潟県23.5、5位富山県22.8、6位山梨県22.0、7位福島県21.8、8位山形県21.6、同高知県21.6、10位鹿児島県21.4の順位。
秋田県の自殺率全国1は19年間でストップしました。県内自殺者数のピークは平成15年の519人、昨年の自殺者数は269人ですからピーク時点から48.2%減少したことになります。
自殺率の最も低いのは石川県の15.7、全国平均は19.5でした。自殺率全国一を返上した感想は
「この難しい自殺対策でもやればできる」
ということです。活動の初期に予想したよりも、自殺者数の減少幅が大きい。減少傾向が定着しつつある。3位以下との減少幅が2ポイント近くあり、対策を緩めると、もとのワーストに戻る可能性がある。被災地の岩手県が全国一ではもろ手を挙げて喜ぶ気持ちにはなりません。秋田県の自殺者数が半減した主な理由は次の5点と考えます
  1. 1998年の「自殺者数3万人時代」の原因を分析して「経済問題」の自殺者数を大幅に減少させた。
  2. 自殺予防民間団体と弁護士、司法書士、臨床心理士等の専門家と連携したワンストップの「いのちの総合相談会」を始めた。
  3. 県、市町村、民間団体、地元新聞を巻き込み全県規模の啓発活動を展開した。
  4. 自殺対策基本法の基本理念に沿って秋田県、秋田大学、民間団体の「関係機関の密接な連携モデル」をつくりあげた。
  5. 「民」「学」「官」のそれぞれの団体の活動歴が10年を超えて対策のノウハウが蓄積した。

    秋田県の自殺対策は全国一の返上で「ひと山」越えました。当法人も6月から14年目の活動に入ります。
    これからは「200人以下」を目指して「戦略的思考」で自殺対策を推進します。

    新聞各社の報道
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    秋田さきがけ新報
    秋田さきがけ新報
    読売新聞秋田版
    毎日新聞秋田版
    朝日新聞秋田版
河北新報に6回シリーズで掲載されました。
秋田県の自殺対策や日本の自殺対策等、佐藤理事長が様々な切り口で書いています。
興味のある方はご一読ください。

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あきた自殺対策センター 蜘蛛の糸

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